いま、聴いておかないと、聴けない落語

▼心血注いだ歌丸師匠の「塩原多助」
 門口に「満員御礼」と大書した立札がかかった東京・永田町の国立演芸場。15日、桂歌丸が演じる圓朝落語を聴きに行った。この国立演芸場でしか聴けない噺である。4月10日から20日までの中席チケットはとっくに完売になった。

 あたしは早く買ったので、席は「2列13番」前から2列目の真正面。一番前が3つも席が空いているので「何だい、満席じゃあないではないか」と思っていたところ、中入り後にすべて席が埋まった。

 落語中興の祖と言われる江戸から明治の噺家で、劇作家だった三遊亭圓朝は数々の名作を世に残した。よく知られているのが怪談噺の「牡丹燈籠」で、このほか名作「真景累ヶ淵」や人情噺の「塩原多助」などがある。

 これらの作品はこれまで何度も映画や歌舞伎で上演された。今回は「塩原多助」のうちの後編「出世噺」を高座にかけると言うので、たくさんの落語ファンが詰めかけた。前篇の「青の別れ」は昨年4月に上演された。

 「塩原多助」は登場人物が多く、場面も上州と江戸が交差するなど噺が入り組んでいる長講。生半可噺家では手に負えない。そんなわけで、今では高座にかける人がいない。

 めったに聴けない噺とあって、昨年聞き逃したあたしは今回は何が何でも聴きに行くと覚悟を決めていた。歌丸師匠は御年、79歳。今年8月14日で80歳になる。今のうちにナマの高座を聴いておかないと聴けなくなるかも、と考え駆けつけた。

 落語仲間から「志ん朝を目の前で聴いた」「圓生はよかった」などと言われ本物を聞いていないあたしは悔しい思いをした。だから、今のうちに聴いておこうと、ウイスキーではないが、“年代物”の師匠の噺は、出来るだけ聴きに行くようにしている。

 桂歌丸は今年で芸能生活65年を迎える。昨年は2カ月近い長期入院を経験し、体調は万全とは言えない。一時は高座を降りると酸素ボンベが待っていたほどだ。だが、落語にかける情熱は半端ではない。

 歌丸は、“円朝もの”には1994年からライフワークとして熱心に取り組んでいる。この日、「塩原多助」を演じる歌丸は「笑点」の歌丸とは全くの別人。40分を超える長講噺に笑う場面が一度もない。賢台を前にして客席に語り掛けるだけ。オチもない。

 話し終えた途端、客席から割れんばかりの拍手が長く続いた。いい噺を聴かせてもらった。財産がまた一つ、増えた。

「塩原多助」については、ここをクリック
http://homepage3.nifty.com/nadokoro/kogai/tasuke.htm

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