世界に向けて発進力を

▼暫定評価を引き上げ
 今回の原発事故の影響は国内にとどまらず、海外からの旅行予約大量キャンセルなど波紋が広がっている。こうした波紋は保安院の「レベル7」発表で、一段と広がる様相をみせている。今、必要なのは明確で、強力な情報の発進力である。

 経済産業省の原子力安全・保安院は12日の記者会見で、東電原発事故の深刻度を国際評価尺度(INES)の暫定評価で、最悪の「レベル7」に引き上げたと発表した。これは1986年、旧ソ連のチェルノブイリ原発での事故と同じ評価。放射性物質の放出について保安院は、チェルノブイリの10%程度と強調した。

▼チェルノブイリ超えと東電
 ところが同席した東電原子力・立地本部長代理の松本純一は、「放出量がチェルノブイリに匹敵、もしくは超えるかもしれない」と語ったから大騒ぎ。発言は海外メディアがトップニュースで扱った。

 しかし、国際原子力機関(IAEA)のフローリー事務次長はチェルノブイリとレベルは同じでも、事故の構造や規模は「全く異なる」と述べた。 その根拠として福島の放射性物質は、チェルノブイリの7%にとどまると強調した。

 さらに仏放射線防護原子力安全研究所(IRSN)も福島の状況は深刻としながらも、チェルノブイリ原発事故との比較で、被害の大きさは「はるかに抑えられている」と分析。英国マンチェスターのダルトン原子力研究所も、「チェルノブイリの5%~10%ほど」との見解を示した。

▼広がる「悪いニュース」
 チェルノブイリの場合は、原子炉の炉心が溶融して爆発。短時間に大量の放射性物質が大気中に放出された。だが、福島では水素爆発が起きたものの、原子炉には至らなかった。

 情報というものは「悪いニュース」の方がより速く、大げさに伝わるもので、「レベル7」だけが強調されて、瞬く間に世界を駆け巡った。日本は風評被害に振り回されている。

▼政府が「日本の元気」発信を
 震災と原発事故によりホテル、旅館の宿泊予約のキャンセルが、全国で60万人分に上っるという。昨年は約71万人だった3月の訪日外国人旅行客数も激減の見通しで、東北ばかりか北海道や京都、長崎など影響は全国に及んでいる。

 観光庁は知事や市長に「日本の元気」を発信するため、観光やイベントに積極的に取り組むよう文書で要請したそうだが、それは違う。「日本の元気」を発信するのは、むしろ政府ではないか。

 地震と津波、原発事故の影響を受けているのは観光業だけではない。日本からの食品への輸入規制が強化されている。工業製品までが「汚染の恐れあり」と、相手国に受け取りを拒否されるケースが相次いでいる。

▼求められる正確な情報
 こうした風評被害を覆すには、日本政府として公式に、明確なメッセージを発信すべきだ。放射性物質については、「レベル7」の数値は水素爆発の発生で現在、急激に低下しているといわれる値が、果たしてどうなっているのか、その後の数値、データを示し、世界に公表すべきだ。

 人々が不安に駆られるのは、「正確な情報を知りえない」からである。納得いく説明が得られれば、風評に惑わされることはない。この際しばらくの間、輸出品については日本政府の「安全証明書」を発行してはどうか。情報発信は、繰り返し実施しなければならない。そうすることで、各国の理解が得られよう。

▼世界に向けて発進力を
 M9の大地震が発生した最中に、88本もの新幹線が走行中だったというではないか。時速200㌔、300㌔での走行。それが1本も脱線することなく停止した。見事である。スゴイというほかない。そんな素晴らしい、世界に誇るべき技術を擁しているのがニッポンである。
くじけてどうする。ひるんでどうする。

日本政府よ、世界に向けて発進力を高めよう。

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