「終」で拍手が起った

▼トキがあのころ戻った
 スクリーンに「終」の文字が浮かぶと場内から拍手が起きたー。丸の内東映で高倉健追悼の特別興行「昭和残侠伝」が上映された。客の大半は、高倉健とともに青春時代を過ごした世代だ。この一瞬だけは、トキがあのころに戻ったようだ。

 上映は24日午前10時30分からのたった1回限り。ウイキペディアによると、「昭和残侠伝 唐獅子牡丹」は1966年1月公開というから48年も前。道理で健さんが若いはずだ。

▼映画館の風景も一変
 当時は学生運動が華やかなりし時代で、全共闘の学生たちに混じって、競輪やパチンコですられた連中もこのシリーズを観に来ていた。理不尽な世界にたった1人で乗り込んでいく主人公に共感を覚え、観客は喝さいを送った。

 あれから随分と時が経ち、映画館の風景も一変。この日は身なりを整えた初老の男性や着物姿の女性が目立った。私は落語仲間と待ち合わせしたが寝過ごした。詫びの電話を入れ、ギリギリに丸の内東映に駆け込んだ。

▼つい、落語会のクセで
 なんと指定席だ。空いてる席は前方のE席16番と、後方のなんとか、と窓口の女性が言った。「前の席を」と私。これが大シクジリ。E席といえば前から5列目。

 落語会は前でないと仕草がよく見えないので、出来るだけ前の席を確保する。ついそのクセが出て、「前を」と言ってしまった。ところが、この劇場のスクリーンは大きくて横に広い。5列目だと首を持ち上げて観ないといけないので、くたびれる。だから前の席が空いていた。ちっともいい(E)席ではなかった。

▼高倉健に釘づけ
 E席16番の席を見つけて座ろうとしたら、なんと隣に落語仲間が座っている。私を見るなり「あれっ、何? どうしたの?」と彼。どうしたも、こうしたもない。偶然だ。こういうことがあるのだと、2人で大笑い。

 そうこうするうちに映画が始まった。ワイドなスクリーン。音響効果も申し分ない。レンタルビデオ屋からDVDを借りてきて、うちで観てもこの迫力は出ない。咳払いひとつ聞えない。みんな高倉健に釘づけだ。

▼目から鼻水が垂れる
 雪の降りしきる中を高倉健がひとりで悪玉をやっつけに行く。池部良と白雪を背に交わすセリフが泣かせる。そこに「唐獅子牡丹」のバックミュージックが流れる

 ♪♪義理と人情を秤にかけりゃ 義理が重たい男の世界・・・。
私たちの世代は、こんなのに弱い。観ていてなぜかグッとくる。知らず知らずのうちに目から鼻水が垂れる場面だ。

▼ありがとう健さん!
 あっという間に1時間30分が過ぎた。涙のあとを隠そうと、照れ隠しにしきりにまばたきをする人。満足そうな表情を浮かべる人。高倉健は間違いなく銀幕の英雄だ。ありがとう健さん!

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